INTRODUCTION
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教員紹介

TEACHER INTRODUCTION
様々な専門分野の教員が在籍しております

矢代 眞己

学科長・教授
研究分野
建築史 / 建築論

NIHON UNIVERSITY JUNIOR COLLEGE
専門

建築史建築論、建築意匠

主な担当授業科目

欧米の建築史、建築計画、建築デザインスタジオ

出身地

東京都文京区

趣味

AV(映画&音楽)鑑賞、読書

ご自身の研究分野・研究テーマについて教えてください。

「振り返れば明日が見える」という言葉を胸に刻み、建築史建築論に関する研究を行なっています。建築計画・設計や意匠とも関係づけながら考えることで、過去から現在、そして未来へと繋がる思考の流れを創り出したいと作業に勤しんでいます。
 一般に「無装飾の白い箱」と形容されるモダニズムの建築ですが、なぜそれが求められ、実践されたのか、その造形(造型)理念の理由と意味について、オランダを解釈の中心に据え「バウエン=構築」という視座を補助線として、社会的な背景も踏まえながら研究を進めています。フランスやドイツといった大国に挟まれ目立ちませんが、実はオランダは近代建築の大国(堀口捨己をはじめ戦前の渡欧者にとってオランダはマストの地でもありました)であり、小国ゆえに合理的・客観的な思考がより求められ、それゆえフランス(ル・コルビュジエ)やドイツ(バウハウス)からは見えない視界が開けるからです。また、その具体的な発露となる実践の軌跡を、集合住宅(ソシアルハウジング)の発展展開のプロセスを舞台に検証してもいます。加えて、山越邦彦等に焦点を当てながら、わが国と欧州との交流の軌跡についても追跡しています。

建築の道・現在の専門分野に進んだ理由,現職に就かれるまでの経歴を教えてください。

実家が工務店を営んでおり、物心ついた頃から建築に馴染んでいました。幼少時は父に現場に連れて行かれることがお気に入りで、自宅の修繕時などは大工のかたわらで、飽きることなく日がな一日、その作業をじっと眺めていたものです。高校時代からは、夏休みなど長期休暇中には「若社長」と呼ばれながら、現場でのアルバイトに勤しんでもいました。
 こうして現業には親しんでいたのですが、短大で建築を学び始めると、「社会の鏡」「思想の帰結」として建築を捉える見方の存在を知り、にわかに夢中となりました。短大の二年生から編入学後の学部三年生にかけて、磯崎新や原広司の著作を(いま想うとどれだけ理解できていたのでしょうか)貪るように読みふけっていました。こうして少々、頭でっかちともなっていた当時の私をそれとなく導いてくださったのが、近江榮、黒沢隆の両先生でした。「無装飾の白い箱」とも形容される(私たちが生きる)20世紀建築の成り立ちを究明したくて、卒業論文ではル・コルビュジエの(ちょっと斜に構えてでしょうか、なぜか)都市計画理念に関する拙い研究を行ないました。大学院の修士課程に進学すると、傑作と呼ばれる作品に引けを取らない成果を生み出しているのに、ほとんど評価されていなかった1920年代後半のオランダ建築の動向に関心の的が移っていきました。こうして修士論文ではオランダの機能主義建築運動についてまとめることになります。山口廣先生のご指導も受けながら、当時としては可能な限りの資料を狩猟して、とにかくまとめはしたのですが、本物を間近に感じてさらに先へと進めたい、と向学心に燃えてしまう結果ともなりました。まだ(商用の)インターネットも存在せず、海外に出かけることもそれほど身近ではない時代でした。
 幸いにオランダ政府給費留学生試験に受かり、画家フェルメールの古里でもあるデルフトの工科大学で、カーレル・ヴェーバー教授のもとに学べる機会を得られました。この際に(ソーシャル)ハウジングが中核となって進んだ20世紀建築の軌道を知るとともに、研究を進めるに従いマルト・スタムという建築家を「発見」することになりました。ここでは詳細は省きますが、それまで評価されて来なかったのですがが、実はスタムは、「バウエン(構築)」という構想の下で、いわば「もうひとつの20世紀建築」の可能性を示していた存在でありました。その事績と可能性を(再)評価した研究の成果が、やがて後の博士論文ともなるのですが、留学当時はそんな顛末を夢にも思っていませんでした。
 オランダでの2年間の学びを終え、半年あまりのヨーロッパ周遊(デルフトで学んでいる際に知り合った欧州各国からの留学生の自宅に逗留させてもらいました。こうしてヨーロッパ各地でよそ行き顔ではない日常生活に触れられたことも大きな収穫でした。これもまた留学の醍醐味)を経て、帰国。帰朝報告に母校に出向くと恩師は、オランダでの学びの成果をまとめることを薦めてくれました。しかしながら、その年の入試は既に終わっており、一年の浪人?期間を経て、博士課程に戻りました。結局5年間を要してしまったのですが、前述の建築家マルト・スタムの近代建築史上における重要性について学位論文をまとめることができました。
 その後、結局は家業を継ぐことはなく、執筆や企画の仕事をしながら、非常勤講師としていくつかの学校で教鞭を執っていたのですが、母校へと誘ってくださったのが、生意気盛りの短大時代から見守ってくれていた小石川正男先生でした。こうして、鮭の川登のように、あちらこちらと旅しつつ、現在に至る場所へと戻ってきたのです。

ご趣味について教えてください。

専門に関わるもの、そうでないものを問わず、読書が好きです。著者とともに自分では描けない世界・宇宙を、この場にいながら旅することをできるのが、最良の幸せです。また、AV(オーディオ&ヴィジュアル)鑑賞も好きです。良い画、良い音で楽しめるようオーディオ装置にも少々、凝っています。考えてみれば、書物も楽曲も映画も、建築と同じく時代を映す鏡でもあります。
 ですが最近は、いずれにもなかなか割く時間を見つけられないことが悩みの種。

建築を志望している学生や在学生へのメッセージをお願いします。

文系は苦手で、理系だから建築を学ぶ、というのは必要ではあるけれど十分ではありません。建築とは、そのどちらをも含んだ「文化系」の存在だからです。裏返せば、何を学んでも建築のための肥やしになるということなのです。ようするに間口の広い領域ですので、自らの関心の糸口を見つけること(私の場合、それが建築史・建築論となりました)が肝要となります。
 これから建築を学んでいく皆さんには、「建築を通じて何ができ得るのか」をしっかりと見据えてもらいたいと思いますし、21世紀の建築を創り出していくために「志」を高く持ってもらいたいとも思います。

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